ちょっとメモ。

印象に残ったので。
「ことばが立ち上げる世界のなかでは、知らないうちに〈ここのいま〉の自分の身体の位置を抜け出し、視点を移動させて、そのことばの世界のなかに身を移してしまっている。たとえば小説を読みふけるとき、読んでいる自分がその世界のなかに移り住んでいるかのように錯覚する。そうした錯覚のうえで人はことばの宇宙を楽しみ、またそこに巻き込まれて苦悩する。このことは別に文章のうまい下手にかかわらない。いかにたどたどしくともことばはことばである。ことばは身体に根ざし、それでいて身体を越えるもの。そうした両義を本性とする。」(浜田寿美男『「私」とは何か』より)
「結局は私が、兄たちを愛しているか愛していないか、問題はそこだ。愛する者は、さいわいなる哉。私が兄たちを愛して居ればいいのだ。」(太宰治『故郷』より)