読了

荻原規子「樹上のゆりかご」。以前、「自分の出身高校をモデルに書いたのに、『うちの学校をモデルにしたんですか?』という手紙をたくさんもらって驚いた」という作者のインタビューを読んだことがあったが、やはり例に漏れずそう思ってしまった。まあモデルという程ではないが、似たようなことやったなあと思い出すなあと。
うちの出身高校、田舎な地元では一応進学校ということになってるのに文武両道とか掲げて今時体育祭も文化祭もかなり真面目に騒ぐ所で。体育祭は応援合戦と言う名の各組のダンスが見せ場で、ダンスミュージックやヒット曲に合わせてかなり本格的なダンスを披露する。三年中心なんだけれども、一生懸命一・二年に教えてマスゲームみたいなダンスに仕上げる。衣装も手作りで結構可愛くて、夏休みほぼ毎日出てきて練習する。もう一つ、「アーチ」という物体を各組作る。5×5メートル位の、竹で骨組みを作って板を打ちつけて、その上にその色にちなんだキャラを竹をしならせて立体でつくる。…説明しにくい。自分は赤だったからエルモだったな。最初は手足を可動式にしようとかバカなことを考えてたり。文型クラスの寄せ集めじゃ無理だったけど。あと三年女子が浴衣着て地元の踊りおどったり三年男子が狸囃子を踊ったりもして、色別対抗リレーがかなり白熱して、体育祭最後はオクラホマミキサーとコロブチカのフォークダンスで締め。これがまたフォークダンス係なんてものが作られて男女の数と並び方を一生懸命決めて(裏工作なんかもあったり)何回も予行練習するんだ。皆嫌がるんだけど、何故か本番では毎年アンコールの声が飛んで、オクラホマミキサーをもう一回流したり(その分人数が回る)。
文化祭は合唱コンクールと各クラスの出し物と文化部展示と。「よろずコンテスト」という、全校生徒にアンケ取ってミスとかミスターとか、20項目位発表されるモノがあったりして、先生方もネタにされて。勿論軽音部のライブとか演劇部の劇とかもあった。「ぶちかまし討論会」という、クラス対抗の討論大会があって、優勝したクラスは教師選抜チーム(笑)と文化祭当日体育館のステージ上で決勝だった。パンフレットも、原稿から印刷製本まで生徒の手作りで。
話が思い切りずれてるし。まあそんな感じで、是非現役高校生に読んで欲しい本。自分たちが持ってる、今しかないキラキラ輝くものがどんなに楽しくてかけがえのないものか。舞台設定として「男と女」てテーマもあるだろうけれど、それ以上に、そういった小難しいことを考え出すのがあの時期なんだよなと思ってしまう。自分の性について悩む時期。積極的な孤独を感じてみる時。同性同士のつながりに入っていけないものを感じる瞬間。逆に同性同士の仲間の居心地よさ。異性へのほのかな関心と、見えるものに惹かれる憧れ。主人公のひろみの感情は、どれも誰も皆通ってきた道であるような。それとも逆に自分が過ぎ去った点だからこそ、こんな風に読んで愛しく感じるんだろうか。真っ只中の人達にはどうなんだろう。
物語のつくりや舞台設定としては、『西の善き魔女』の丁度逆を行くかのように感じる。但し主人公が少女と言う点は変わらないので視点の向け方は似ているのだけれど。結局目指す点が似ているように感じるのは矢張り作者が一緒だからか。西の善き魔女、読み返したくなったなあ。